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2023.04.19.
福祉制度解説
障害者基本法とは
こんにちは!
障害者就労移行支援事業所スマイルハートです!!
スマイルハートでは、障害をお持ちの方の就労支援を行なっています。
今回は障害者支援の根幹にあたる『障害者基本法』について、詳しく解説していきます!!
障害者基本法の理念とは
障害者基本法は、平成5年にそれまであった心身障害者対策基本法から名称が改められたものです。法律の目的として、第1条には、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進すること」と定められています。それまでの医療、保険からの規律に福祉の観点をプラスしたもとなります。
条文の表現をより分かりやすく表現されたものが、内閣府のホームページに記載されており「障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加の促進を規定し、障害者の「完全参加と平等」を目指す」とされております。
障害者基本法に規定される「障害者」とは
また、この法律の対象になる障害者という用語の定義は、第2条にあります。「障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」をいうとされています。
現在の障害者総合支援法に規定される対象者に比べ、指定難病患者は含まれていない点が大きく異なる点になります。
地域社会における共生とは
障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されると規定されています。また全て障害者は、
・可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられない、
・可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られる、と規定されています。
これらの理念を実現するために、政府は障害者の福祉等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画を策定しなければならないとし、地方公共団体においてもこれに準じた計画の策定に努めなければならないとしています。
つまり、障害があることによって障害がない人が享受できているもの(社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会、どこで誰と生活するかについての選択の機会、地域社会において他の人々と共生すること、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会)が奪われてはいけない、ということになってまいります。
内容を読むと、当たり前のことと感じ取れるかもしれません。しかし法律で改めて規定しなければならないほど、障害をお持ちの方たちは不利益を生じていたということになりますし、また制定時には存在していたということになってしまいます。
2004年改正内容
障害者基本法の一部を改正する法律が公布・一部施行され、法律の目的、障害者の定義、基本的理念など、大幅に改正されております。本改正によって、3条3項として「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」ことが追加されることとなりました。
2011年改定内容
国際連合総会で採択された障害者権利条約の批准に向け、国内法整備の一環として改正されています。2011年(平成23年)8月5日、障害者基本法の一部を改正する法律が公布・施行され、障害者政策委員会等については、2012年5月21日に施行されています。大きな改定内容の特徴として、障害者の定義の拡大と合理的配慮概念の導入を指摘することができる、とされております。
前者については、第2条が「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」としたため、性同一性障害のように、従来であれば障害者に含まれない者についても、広く同法の対象とされることとなりました。
これは、従来の障害者の捉え方が心身の機能的損傷という「障害者の医学モデル」を重視していたのに対し、実際の社会的障壁から障害状態の判断をするという「障害者の社会モデル」へ見解を転換したことを表しております。障害者権利条約の批准を目的として、もっとも大きく変更した点ではないでしょうか。
後者については、第4条2項にて「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。」とされました。これを受け障害者差別解消法の中でも、この合理的配慮の実施を日本国政府や地方公共団体、独立行政法人、特殊法人については義務、また一般事業者については努力義務が課されることとなっております。
まとめ
2021年5月、障害者への合理的配慮の提供を民間の事業者にも義務付ける、障害者差別解消法の改正法が成立しております。つまり、障害をお持ちの方が就労により社会参加する際は、公民問わず合理的配慮を求めることが可能であり、雇用側は合理的配慮に対応することが義務化されております。
しかし合理的配慮に対する明確な規定が設けられておらず、また違反した事業者への罰則規定もありません。安心して長く安定して働くためにも、まず自身に必要な合理的配慮を理解することも必要だと考えられます。自身の求める配慮が過度な内容になっていないか、一度振り返ることも大切ではないでしょうか。